「人魚姫の宝箱」
これがキスマークならば。
君が僕のファムファタルならば。
僕は海が見たい。
僕は音と弾けたい。
君の言葉は泡になる。
人魚のように泡になる。
ぱちぱちと言う音を、
君は命を削る音を出す。
僕は目に焼き付けた。
強くつよく焼き付いてしまった。
それは呪いのように
強くつよく遺ってしまった。
これがキスマークならば。
君が僕のファムファタルならば。
見えない傷をつけてくれ。
見える場所につけてくれ。
永遠に冷めない夢が、
いつか夢でなくなるように。
永久にほどけない嘘が、
いつか嘘でなくなるように。
いつの日も、
僕が僕である為に。
来たる日に、
僕が僕でなくなる為に。
あの子のように、
誰かの心に傷をつけよう。
これがキスマークならば。
君が僕のファムファタルならば。
ほどけた真珠の首飾りは、
僕の両手がしまい込んだ、
君の細い首筋に似合っていた。
今日が今日であったことを、
今日の僕と明日の君が証明する。
今日は今日でしかなかったことを、
明日の僕が今日の君に証明する。
「彼は消えた」