鋭く舐めた水面(みなも)の波紋 手指(てゆび)の先は痺れるようだ 霞に揺れる儚き楼(ろう)は 道の半ばで旅人(りょじん)を止める 往くか行かずか語るを知らず 静かに楼は姿を消した 握った緩い掌からは 微熱と砂が零れていくが 地に着く頃に芥(あくた)となりて 過ぎ行く彼の足跡(そくせき)となる