「Stray Sheep」―泥を吐く魚(忘水の街)―
それは、簡単な呪い。
流れに逆らったり流されたり、
自由に川を泳ぐ日々を過ごしていただけなのに。
口から泥を吐くのは、
呪われた証だった。
我らが吐くのは見えない泡玉。
それは想いであり、
言葉であり、
呼吸である。
思いを伝えようと、
言葉を紡ごうと、
ただ口を開くだけで、
黒く淀んだ泥が吐き出される。
いくらでも、どこまでも。
「可哀想に、苦しいでしょう」
呪いを解くのはいつだって、
自分のそばにいてくれる誰かなのだと、
知った時にはひとりきり。
口から泥を吐くのは、
私が呪われている証。
「Stray Sheep」 忘水の街 より