「Stray Sheep」―螺子と錠剤(機械の街)―

「それ、ホントに効くの?」

ケースからこぼれた錠剤を訝しげに持ち上げた彼は言った。

「ああ、抜群に効くよ。これを飲み始めてから調子がいいんだ」

そう返すと、彼は眉をひそめて影を作り、そのままこちらを見つめた。
澄んだ目には、そんなわけがあるかと書いてある。彼にはきっと理解ができないことだろう。

この錠剤は特別製。
彼も周りも、僕がこの錠剤を飲むたびにおかしな顔をする。

確かにおかしな形かもしれない。
確かにおかしな量かもしれない。

この錠剤は特別製。
円筒状の形状で、面に沿って螺旋に溝がついている。
頭の部分には印がついていることもあるのだから、へんてこというほかはないだろう。
バツ印に六角形、四角もあれば、横に真一文字もある。

「今日もそれ、飲むの?」

ケースからこぼれた錠剤を訝しげに持ち上げた彼は言う。

だから僕は答えるのだ。

「ああ、今日もだよ。これを飲み始めてから調子がいいんだ」

君が忘れてしまっても、僕が忘れてしまわぬように。
僕を救ってくれた君の手は、今日もケースからこぼれた錠剤を訝しげに持ち上げる。

この錠剤は特別製。
円筒状の形状で、面に沿って螺旋に溝がついている。

彼にもらったものだから。
だから僕は螺子を飲んでいる。


「Stray Sheep」 機械の街 より

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