「花を手折る」

腹を空かせた化け物は、次の獲物をみつけたらしい。

大きな口に大きな牙、鋭い爪に鋭い目線。

ごわごわした毛の体としっぽ、頭の上には大きな耳。

これで角まで生えていたなら、悪魔の使いと呼ばれるやも。


腹を空かせた化け物は、静かにしずかに息を潜めた。

獲物に狙いを定めたらしい。


花のような女の子、白いドレスの女の子。

自分が狙われるだなんて、少しも思っていやしない。

白いドレスに花が咲く。

赤く大きな花が咲く。


腹を満たした化け物は、満足そうに帰って行った。

元来た道を帰って行った。

それはそれはおおきくて、不気味な跡を残しながら。


小さな花を踏み散らしても、彼の腹は少しもふくれやしないのに。

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